2017-03

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牛など庭のこと

乳牛は、ときどき小屋の門を開けて自由にさせている。小屋から出てきた牛たちは、庭のなかの思い思いの場所に寝ころんだり、散歩したりしてくつろいでいた。

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やはり牛も、毎日世話をしてやると、飼い主のことを覚えるようだ。わたしが近寄ると警戒して立ち上がる牛もいたけれど、砂漠人の弟が来るとうれしそうな反応をしているのがよく分かる。
門のない庭に放してしまって、牛は逃げたりしないのだろうか? わたしが見ていた限りでは、飼い主が分かっているからか、そういう気配のする牛はいなかった。放し飼いにしていると、牛が逃げることよりも、人に取られる心配の方が大きいのかもしれない。

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日陰で休む牛のそばでは、ご近所さんのガチョウたちが水浴びをしている。ニワトリだけでなく、ガチョウまでが出かけてくるのには驚いた。
地面は平らじゃないし、泥がはねるし、あちらこちらで色々な動物がそれぞれの営みを行っていて混沌としているけれど、座って眺めているとじんわり神経の休まるような、牧歌的な庭だ。どんな音が聞こえるかといえば、数件先につながれているロバがときどき鳴いているのが一番印象的だった。ロバの鳴き声、聞いてみたい人はここを試してみてください。または今度お会いしたときに、わたしが鳴いてみせますよ。

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もちろんガチガチもいます

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庭にはニワトリが

砂漠人のふるさとに帰ると、まわりはみんなトルクメン語を話しているので、唯一の外国人であるわたしは言葉の面でストレスがたまる。もっとも言葉だけでなく、慣れない生活習慣が煩わしい上、外国人がめずらしいのか、親戚やこどもたちがひっきりなしに訪ねてくるので「ちょっと一人になりたい…」と思うこともあった。
そんな気持ちはじつはすぐに消えてしまうものだったが、それでも居候している砂漠人の母の家を出て、新居まで散歩に出かけるのを日課にしていた。新居は町の外れなので人が少ないし、カスピ海が見渡せるし、なにより将来の住処なのだ。旅行中にできるだけイメージトレーニングをしておきたいと思っていたのである。

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家の2階から庭を一望する。庭には一番奥に牛小屋があり、右側に見えるのは厠。土の色が濃くなっているところには、牛の糞がためてある。
牛の糞。これがどんなに大事なものであるかは、それまで知らなかった。たとえば木の根元に置くことで、肥料になり、その果樹がすばらしい実をつけるのに役立つ。また畑の土を作るのにも使えるんじゃないだろうか。匂いが臭いという人もいるだろう。でも砂漠人はこれを「自然のいい匂い」と言っている。わたしはそう感じはしなかったけれど、きれいな空気を吸って草を食べて生きている牛から出る糞が、それほど汚いわけがないとも思う。

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その牛の糞の混じる土に、近所のニワトリがやってくる。小さなヒナも負けじと続いている。毎日、広い敷地を思う存分歩き回るので、さぞかし立派な筋肉がつくことだろう。これだけやってきて、一つくらい卵を産み落としていかないものだろうかと探したけれど、さすがにそれはなかったようだ。もっとも卵が落ちていたら、すぐにガチガチが食べてしまうのかもしれない。
たくさんのニワトリはご近所さんのものだが、ここに住んだらうちでニワトリを飼えば、どんなに楽しいだろう。牛の糞→ニワトリ→ごちそう。食物連鎖の過程を目の前で見ることができるのだ。そしてその鶏肉はどんな味がするのか、自分の舌で味わうことができる。想像しただけでもすばらしい。
そして庭にはたくさんの果樹を植えたい。ザクロ、イチジク、モモ、レモン、オレンジ、モモ、カキ、などなど。こうしてイメージトレーニングはつづいてゆく。

番犬たちの話・その3

マザーとシロがお隣さんの子羊を食べてしまった。けしからぬ話だが、もっとぞっとするのは、そのために2匹が殺されてしまったことだ。砂漠から連れられてきてあの敷地で育ったマザーとそこで生まれたシロは、2匹とも飼い主のわたしたちによく懐いてかわいい犬だった。だが、もうこの世にはいない。かわいそうな最期となってしまった。

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砂漠出身のマザーとその子、シロ(手前)

そんな事件があってしばらく考えていたのだが、砂漠人はついにこんな結論に至ったようだ。

マザーとシロの悪行をそそのかしたのは、おそらくクロだろう。なぜならクロが来る前は、マザーとシロも含めて、うちの番犬がお隣さんの子羊を襲うなどというトラブルは一度もなかったからだ。流れ者のクロが、町での暮らしに慣れていない砂漠の血が流れる犬たちに、悪さを教えたに違いない。そう考えると、散歩の途中に動けなくなった子羊にクロがピタッと寄り添っていた理由も、ガチガチとキングによるリンチなど、過去の様々な出来事についても合点がいく。わたしは、マザーとシロが子羊を襲っているとき、きっとクロも現場にいたんじゃないかと思ってしまった。そしてすばやく逃げたんじゃないかと疑ってしまう。
砂漠人が言うには、砂漠で生まれ、砂漠で育った犬を町に連れてくる際には、十分気をつけなければならない。環境の厳しい砂漠生活で培った性質は、町に連れてくることで混乱してしまうことがある。それは犬に限らず、羊などの動物も、人間も同じことだそうだ。
今回の事件における番犬たちの悪さの最大の理由はもちろん、離れた敷地に飼っているので、飼い主が犬たちに対する細かなケアやしつけができなかったことにあるだろう。

さて、ここまで来て、あなたならクロの処遇をどうするだろうか?

番犬たちの話・その2

砂漠にいる羊の中には、妊娠したり病気になったりして群れについていけない羊が断続的に出てくる。そういう場合、弱った羊たちだけを砂漠から連れ帰り、3匹の番犬がいる自宅近くの敷地でケアをすることがある。去年わたしがイランに行った際も、20匹ほどをリハビリさせていたので、砂漠人と一緒にそこでの羊との散歩を日課にしていた。

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手前にじゃれるキングとシロ

羊たちを敷地の外に出す際は番犬たちもついてくるのだが、ある日こんなことが起こったのだ。群れの中にとても弱っている子羊がいて、散歩に出るとどうしても群れについていけず、立ち止まってへたり込んでしまう。群れを止めるわけにも、子羊を抱きかかえるわけにもいかず困っていたら、クロがきて子羊の側にピタッとついている。へたり込んでしまった子羊から目を離すことなく、見守っているようだった。他の犬たちが遊んでしまって役に立たないときに、クロだけが職務を全うしている姿がとても印象的だったので、よく覚えている。砂漠でもそうなのだが、トルクメンの番犬は教えなくても羊の群れの守り方を知っているようだ。そんな行動を目にして、砂漠人はクロを賢い犬だと思っていたのだが… じつはクロは、子羊が死ぬのを待って食べようとしていたのではないかということに、だいぶ後になって気づいたのだった。

かなり前のことになるけれど、例の敷地である事件が起こった。イランにいる弟に電話した砂漠人が、その会話の中で知ったことだ。それは、自宅から離れた敷地に飼っていたうちの犬たちが、お隣さんの子羊を食べてしまったというものだった。なんと犯人は、マザーとシロの親子。2匹は、現場を目撃したお隣さんに捉えられたようだ。つづく。

番犬たちの話・その1

ガチガチとキングの他には、少し離れた敷地に3匹の犬を飼っていて、わたしたちはその3匹を「マザー」「シロ」「クロ」という名前で呼んでいた。

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左から「クロ」、「シロ」、「マザー」

「マザー」は、砂漠に住むある羊飼いからもらったトルクメンの牧羊犬だ。当時まだ子犬だったマザーは、生まれ故郷の砂漠を離れて町外れのうちの敷地で育ち、やがて近所にボーイフレンドを見つけ、5匹の子犬を産んだ。残念ながら子犬たちは病気などで次々と死んでいったのだが、その中で1匹だけ生き残ったのが「シロ」だ。
かたや、「クロ」は野良犬だった。どこからか、うちで雇ってくれと自分から願い出てきたそうだ。その後、この敷地に居ついたので他の犬たちとともに飼っていたのだが、マザーやシロとは違い、飼い主のわたしたちにも決して近寄ることのない犬だった。だから餌はやっても頭をなでてやったことはない。砂漠人はこのクロに一目置いて、非常に用心深いトルクメン犬だと感心していたくらいなのだ。
そんなガチガチ、キング、マザー、シロ、クロという5匹の犬たちと過ごして、わたしは去年イランを後にしたのだが、その数ヶ月後に再び帰郷して、砂漠人は意外な場面に遭遇したという。例の敷地で、ガチガチとキングがクロにリンチを加えているのを目撃したのだそうだ。2対1でクロに対して激しく攻撃していたので、砂漠人はガチガチとキングを叱りつけたとのことだった。
そんな話を聞いて、わたしは「ガチガチは本当に仕方のない犬だな。それにしてもどうして頼りになるキングまで弱い者いじめをするんだろう?」と思っていた。

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いつでもどこへでもついてくる忠犬キング

つづく。

ガチガチとキング

砂漠人が今回の帰郷の際に撮ってきれくれた写真はわずかでしたが、その中には気になっていた犬たちのものもありました。去年わたしが旅行したときは、の家に「キング」、誰も住んでいない新居に「ガチガチ」、そして少し離れた敷地に3匹の番犬を飼っていました。
キングはわたしたちが移動するときには車の前を走って誘導してくれるほど忠実な番犬です。飼っている5匹の中でも一番の古株で、一番勇敢な犬でした。一方ガチガチは、一歳半の男の子で愛嬌はあったのですが、いざ出かけるとなるとわたしたちの後を歩いて、吠えまくる近所の犬たちから守ってくれる気配はありません。餌をやれば野良猫たちをみな蹴飛ばして独り占めしようとするし、持ち場を離れてわたしたちの後を追ってばかりいる、ちょっとダメな犬でした。ガチガチは留守宅を守るという務めを持った犬でしたが、留守のはずの家主が帰ってきてあちこちしたので職務内容が混乱してしまったのでしょう。それでもその後、奥さんをもらって一人前の犬に成長したと聞いていました。

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キング

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ガチガチ

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ガチガチは寄生していた背中のダニも取れて、去年に比べてだいぶ体も大きくなったようでした。ところがなんと、奥さんには逃げられてしまい、今は男やもめ生活を送っているそうです。まさか、餌を独り占めするので奥さんが愛想を尽かしたのでは、、、

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