犬に噛まれた!
ある日の夕方、オートバイで海までドライブした帰り、砂漠人の知り合いの「チーズおじさん」の家に立ち寄った。彼はトルクメン語で「チーズおじさん」と呼ばれているのだが、特にチーズを作っているわけではないそうだ。

その家は、集落と海のあいだの広大な土地にポツンと存在しているので、人が通りかかることはほとんどない。偶然寄ってみたらおじさんは喜んでくれたが、日本から来た砂漠人の新妻(わたし)を見て何度も「若い。若過ぎる。」と言っていた(苦笑…)。そしてたくさん飼っているヤギも見せてくれた。ヤギというのはヒツジと違ってかなり活発で、屋根の上でもどこでもヒョイヒョイと登ってしまう、厄介な動物なのだ。

ヤギの他にはたくさんの番犬がいて、チーズおじさんの敷地の四方を守っていた。たしかにこの辺鄙な場所では、番犬がいないと泥棒やオオカミなどに対して不用心かもしれない。
辺りも暗くなってきたので、おじさんに別れを告げて、わたしたちはもと来た道に戻った。カスピ海から町につながる、細い泥の道だ。当然、おじさんの番犬が何匹か追いかけてきたが、そのときはまだ軽く吠えていた程度だった。
番犬たちがしつこく後をつけてきたので「あっちへ行け!」と追い払ったものの、効果なし。しばらく走った後、砂漠人は突然、オートバイのスピードを上げるべく、エンジンをブウン! と噴かせた。とても大きな音をさせたので、犬が怯えてそれで逃げ切れるかと思ったら大間違い。なんと犬たちはその音量に反応して、さらに大きく吠え始めたのだ。3〜4匹いただろうか。後ろに乗っていたわたしは興奮した犬たちを見るでもなく、とにかくその場から離れられること願っていた。関心のないフリをするのが一番だと思ったのだ。
砂漠人につかまって前を向いていたものの、吠えている犬たちとの距離が縮まってきているのはうすうす感じていた。そこでもって、ガブッとやられた。噛まれたのだ。左臀部、つまりおしりをガブッと。
それはそれは驚いた。犬に噛まれたのだ。「犬は威嚇しているだけであって噛む訳はない」と、根拠なく思っていたものだから、噛まれた後でも痛いのにピンと来なかった。それでも精一杯、砂漠人の耳元で「犬が噛んだ! 犬が噛んだ!」と言ってみた。
砂漠人はいよいよバイクを止めて、暗がりで見守っていたおじさんの息子に「犬が噛んだぞ!」と叫んだ後、全力で、本当に野獣のような勢いで番犬たちを威嚇し、なんとか帰路につくことができた。そのド迫力に唖然としながらも、おしりを押さえながら「イランで犬に噛まれたよ〜」と不思議な感慨にひたったのだった。
さて、家に戻ってさっそく話をした。わたしは周りの反応が楽しみで、どうやって説明しようかとワクワクしていたくらいなのだが、傷口を見た砂漠人の弟の奥さんが深刻な顔をして心配してくれた。確かにワンピースもパンツも、一部が食いちぎられてしまったのだ。それがまたおかしいけれど、イランの犬事情を知らないので、万が一、狂犬病にかかったら…という思いがないでもなかった。でも、話を聞いた砂漠人のお母さんはクックックッと笑っていたので、大事には至らないのではないかと思うことができた(そして実際、その犬は予防接種をしていたし、わたしもワクチンを打ったので問題なかったのです)。
イランで犬に噛まれたよ! ちょっとした自慢話です(?)。

その家は、集落と海のあいだの広大な土地にポツンと存在しているので、人が通りかかることはほとんどない。偶然寄ってみたらおじさんは喜んでくれたが、日本から来た砂漠人の新妻(わたし)を見て何度も「若い。若過ぎる。」と言っていた(苦笑…)。そしてたくさん飼っているヤギも見せてくれた。ヤギというのはヒツジと違ってかなり活発で、屋根の上でもどこでもヒョイヒョイと登ってしまう、厄介な動物なのだ。

ヤギの他にはたくさんの番犬がいて、チーズおじさんの敷地の四方を守っていた。たしかにこの辺鄙な場所では、番犬がいないと泥棒やオオカミなどに対して不用心かもしれない。
辺りも暗くなってきたので、おじさんに別れを告げて、わたしたちはもと来た道に戻った。カスピ海から町につながる、細い泥の道だ。当然、おじさんの番犬が何匹か追いかけてきたが、そのときはまだ軽く吠えていた程度だった。
番犬たちがしつこく後をつけてきたので「あっちへ行け!」と追い払ったものの、効果なし。しばらく走った後、砂漠人は突然、オートバイのスピードを上げるべく、エンジンをブウン! と噴かせた。とても大きな音をさせたので、犬が怯えてそれで逃げ切れるかと思ったら大間違い。なんと犬たちはその音量に反応して、さらに大きく吠え始めたのだ。3〜4匹いただろうか。後ろに乗っていたわたしは興奮した犬たちを見るでもなく、とにかくその場から離れられること願っていた。関心のないフリをするのが一番だと思ったのだ。
砂漠人につかまって前を向いていたものの、吠えている犬たちとの距離が縮まってきているのはうすうす感じていた。そこでもって、ガブッとやられた。噛まれたのだ。左臀部、つまりおしりをガブッと。
それはそれは驚いた。犬に噛まれたのだ。「犬は威嚇しているだけであって噛む訳はない」と、根拠なく思っていたものだから、噛まれた後でも痛いのにピンと来なかった。それでも精一杯、砂漠人の耳元で「犬が噛んだ! 犬が噛んだ!」と言ってみた。
砂漠人はいよいよバイクを止めて、暗がりで見守っていたおじさんの息子に「犬が噛んだぞ!」と叫んだ後、全力で、本当に野獣のような勢いで番犬たちを威嚇し、なんとか帰路につくことができた。そのド迫力に唖然としながらも、おしりを押さえながら「イランで犬に噛まれたよ〜」と不思議な感慨にひたったのだった。
さて、家に戻ってさっそく話をした。わたしは周りの反応が楽しみで、どうやって説明しようかとワクワクしていたくらいなのだが、傷口を見た砂漠人の弟の奥さんが深刻な顔をして心配してくれた。確かにワンピースもパンツも、一部が食いちぎられてしまったのだ。それがまたおかしいけれど、イランの犬事情を知らないので、万が一、狂犬病にかかったら…という思いがないでもなかった。でも、話を聞いた砂漠人のお母さんはクックックッと笑っていたので、大事には至らないのではないかと思うことができた(そして実際、その犬は予防接種をしていたし、わたしもワクチンを打ったので問題なかったのです)。
イランで犬に噛まれたよ! ちょっとした自慢話です(?)。
